ゆう座|奈良高の原・板前寿司

ミシュランガイド2017特別版で調査員おすすめの店に選ばれた、ランチも頂ける寿司店・ゆう座。

2011年には星1つ、2015年にはビブグルマンに選ばれるなどミシュランの常連で、奈良を代表する寿司店の一つ。

カウンター8席のみのこじんまりしたお店なので、平日昼間でも必ず予約してから訪問したほうが良い人気店だ。

スマホの音声検索ではゆう座と読み上げても、「遊佐」や「ユーザー」などを返してきて、認識率が低くて困るかもしれない。

お店はならやま大通り沿いに有り、右手に曲がると東大寺学園があるT字路の北側にある。

画像で言う写真左手、接骨院看板のブロック奥側が駐車場入口だ。

その奥側にお店があるが、車で行く際には初めての場合わかりにくいので注意しよう。

お店は板前のご主人一人と奥様だろうか。

2人で切り盛りされていて、お店の隅々まで店主の目が行き届く作りになっている。

ランチはお寿司10貫とわかめポン酢、茶碗蒸し、デザートが付いたコースが3500円税込みとお得感がある。

他に4800円と6800円の握りコースもあるが、居合わせたお客さんは全員、お昼のコースを注文していたようだ。

単品価格もそれほど驚くような値段でも無いが、ネギトロ巻き3000円はかなり突出している。

コースはわかめポン酢から始まる。

肉厚なわかめにただポン酢を掛けただけのものだが、偶然これが大好きな料理の一つなので、嬉しい不意打ち。

テーブルにはお手拭き以外に指拭きが用意されている。

手で摘んで頂いて欲しいという職人からのメッセージだ。

職人が心を込めて握った寿司は箸で食べるともったいない。

優しく握られたシャリは優しく指で摘み、指先に伝わるシャリのフワフワ感と職人の心配り、心尽くしを併せて頂きたい。

抵抗がなければ、職人が良い仕事をしていると思った店ではぜひ、お寿司は手で摘んで食べて欲しい。

ヒラメにイカ、イワシの順番で握りが始まる。

淡白な白身にしっかりと仕事し、ポン酢で頂くスタイルはいかにも江戸前だ。

イカは細かく包丁を入れ、塩とゆずで頂く。イカの一番美味しい食べ方で嬉しい。

イワシがまた凄い。

上品な脂がたっぷりと乗った身の甘さは、イワシであることは間違いなのにイワシとはとても思えない。

口の中でとろけてしまうイワシは小さく刻んだ大葉がシャリとの間に仕込まれており、たっぷり乗った脂のしつこさを感じさせず、ただサラサラと口の中を流れていく。

シャリはまるで、その存在感を感じさせないような仕事をする。

確かにシャリを頂いているはずなのに、ネタと一緒にふんわりとほぐれネタと一体になり、その美味さを優しく口の中に広げていく。

まるでシャリが居ないかのような潔さですぐに姿を見失うのだが、刺し身単体で頂く美味さではない渾然一体となった後味は紛れもない寿司の美味さだ。

本マグロのトロに貝柱、車海老だ。

トロの美味さについては多くを言う必要はないだろう。

期待通りの美味さであり、脂の旨味、トロの鼻に抜ける良い香りはただただ言葉を失う。

脂がきつすぎる部分の使用を避け、赤身の美味さと脂のバランスがちょうどよくなるように包丁を入れてひと仕事している。

貝柱は軽く炙ってあり、頼りないほどに柔らかい食感で貝の旨味が口の中に一気に広がる。

そして車海老。湯引きにして表面だけ火を入れてあるのだろう。

見た目の美しさも見事だが、少しハリのある表面の食感と、完全に火を通していない身の絡みつくような食感の対比が美味さに輪をかける。

えび味噌を握り込み、海老を丸々1匹頂けるようになっており、ただただ海老の美味さに思わず目を閉じて、繰り返し口の中にひろがる美味さを無心になって堪能した。

赤身のヅケに茶碗蒸し、穴子の塩とタレだ。

赤身をヅケにすると下手な店の場合、赤身の旨さを下手な調味液で台無しにしてわざわざ不味くして食べさせることがあるものだが、もちろんそのようなことはない。

赤身のもつマグロらしい強い旨味を活かしながらも、 赤身そのままの寿司とはまた違う熟成された旨味が加わり、深みが生まれている。

茶碗蒸しは提供される際にテーブルでゆず皮をおろし、軽くふりかけてくれる。

優しく香ってくる柚子の香りが心地よい。

味は極めて淡白で、玉子と出汁の旨味に集中させる力がある。

具はとても味の濃い鯛の切り身。贅沢な茶碗蒸しだ。

そして江戸前寿司の職人の腕の見せどころである穴子。

期待を裏切らずに、これがまたすごい。

フワフワとろとろに仕上げられた穴子は、これが本当にスーパーなどで売っている穴子と同じ生き物なのかと思うほどに、完全に別の食材だ。

もちろん良い食材を選んで使っているのは間違いないだろうが、これほど優しくふわふわした食感を引き出すのはやはり板前の高い技術あってのものだろう。

よくできた江戸前寿司の店では、やはり穴子の凄さに感動させてもらえる。

あおさのりの味噌汁に梅しそかっぱ巻き、卵焼きとアイスクリームでコースは終了だ。

かっぱ巻きが大好きなので、握りの最後に梅の酸味が効いたかっぱで締めてくれるのは嬉しい。

卵焼きは、まるでおやつのように甘く、玉子とは思えないぷりぷりした食感で楽しませてくれる。

シャリに乗ってこないので、寿司というよりもこれはデザート代わりということで最後に出てくるのだろう。

その後味のままアイスクリームを頂けて、とても楽しめた。

星1つからビブグルマン、ミシュラン調査員おすすめの店と、形の上ではランクが下がっている事になっているが、そんなことは関係ないだろう。

店主の心尽くしが堪能できる寿司を、他人がとやかく言うことではなく、頂きに行った人がどう感じるかだ。

大満足である。

余談だが、相席していたお客さんが店主に、「最近お忙しいでしょ?」と質問していたが、店主は、

「目の前の仕事に集中するだけですから、忙しいと感じないんですよ」

と返していた。

男前なカッコイイ返しである。

これ、いつかどこかで使わせてもらおう。

【店舗データ】

店名:ゆう座         

所在地:奈良市右京3丁目2-5  

定休日:水曜日        

TEL:0742-71-4446       

営業時間 :11:30~14:00 17:30~22:00 

駐車場:店横5台        

子供連れ:-          

Webサイト:-         

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