ミシュランガイド2017年版に、調査員オススメの店として掲載されたうどん店、釜粋。
うどん日本一を決めるU-1グランプリ2014で売上部門2位に輝いたお店でもあり、地元民にとってはうどん定番店舗の一つ。
近鉄奈良駅から東向商店街に入って150mほど南に行き向かって左側、奥に長細い和風の外観が特徴的なお店だ。
場所柄、インバウンドや修学旅行生がとにかく多い。
おそらくミシュランガイドに載ったこともあるのだろうが、地元民と思われる客の割合はかなり少なくなっている。
店内は中国語、韓国語、英語にフランス語が聞こえてくる上に、制服姿の修学旅行中と思われる学生も団体で食事を楽しんでいるなどなかなかカオスだ。
こちらの店は、とにかくメニューがびっくりするほど多い。
同じミシュラン調査員おすすめの店に選ばれた、高畑町のうどん店「たつや」がシンプルで1枚もののメニュー表なのに対して、実に9ページ分ものメニューが有る。
大体はちく天や鶏天、えび天などトッピングの差によるものだが、それ以外にカレーうどんやうどんすきもあり、「つけうどん」などなかなか見られないメニューもある。
場所柄、いろいろな国から来た観光客の好みに出来る限り広く合わせたいという経営方針だと思うが、ここまでの品数を出すのは大変だろう。
たつやが2名で切り盛りしていたのに対して、こちらの店舗では厨房を併せて8名程度のスタッフが忙しく動き回っていた。
上が塩つけ麺900円で、下がえび天ざる1250円。
飲食店にお邪魔すると、なるべく、そのお店で一番の定番と一番チャレンジしてそうなメニューから1品ずつ選ぶように心掛けているので、敢えて塩つけ麺なるメニューに挑戦してみる。
塩つけ麺・・・微妙である。
美味いか不味いかで言えば美味いのだが、サッパリとざるうどんを食べたい、というニーズには全く応える気がない味の構成だ。
「今日は暑いねえ、ざるうどんでも食べに行こうか」
と誘い合わせて店に入り、物珍しさから塩つけ麺を頼むと一口目すすった瞬間に、期待してたものではない、という事になるだろう。
味は鶏の脂と旨味の存在感が相当強い。うどんというよりも鶏塩ラーメンだ。
小麦粉の旨味を味わうというよりスープの旨味を楽しむためのメニューで、ラーメンスープでうどんを食べるというニーズに応えるものになっている。
このメニューは、「釜粋の塩つけ麺を食べたい」というお客さんを掘り起こすためのアイデアだと考えて、新しい味に挑戦したい時に注文してみるといいだろう。
一方のえび天ざるうどんは、極めてオーソドックスで美味い一枚に仕上がっている。
つけ汁の出汁はかなり分かり易い「いりこ出汁」。だし汁を頂くと、カツオに比べ香ばしく魚の旨味の強いいりこが強く自己主張する。
高畑町のたつやのように、こちらのつけ汁も甘味がかなり目立つ。
たつやの甘味は正直どのような材料に由来するものなのかわかり辛かったが、釜粋の甘味、これはみりん由来の甘味で間違いないだろう。
通常のうどん店よりも上質のみりんを多めに使い、いりこの魚の旨味とみりんの甘さが自己主張しながら調和する、分かり易いが材料を厳選しないとすぐにバレる、真っ正直な味の組み立てだ。
素材の旨味で勝負しようという、店主の料理に対する姿勢が窺える味になってる。
うどんの麺だが、正統派の手打ち讃岐うどん。
たまに薄かったり潰れた部分もあるのは、手打ちうどんらしいご愛嬌だ。
角が立っており黄色がかった、良い小麦粉で丁寧に打ったことが良くわかる麺で太さは中太と言ったところだろうか。
「たつや」との違いは、わずかにこちらの方が麺が細く感じられ、かつコシを程々に抑えていることだろう。
これはおそらく、グルテン含有量がたつやに比べ低くなるようにブレンドした、あるいはそういう小麦粉を用いていることによるものではないだろうか。
たつやのうどんはかなり食いでがあり、噛みごたえが強い麺になっているが、釜粋では噛んだ瞬間、強いコシを感じながらも潔くプッツリと麺が切れる。
擬音で例えると、たつやが「モチップルッ」とすれば、釜粋は「モチップツッ」だ。
ミシュラン調査員オススメの店に選ばれた奈良市のうどん2店舗だが、出汁の構成も麺の味わい方もそれぞれの個性が立っていてとても楽しめる。
昼時には少し待つこともあるかもしれないが、本格的な讃岐うどんをオーソドックにアレンジしたとっつきやすい味になっているので、近鉄奈良駅周辺でランチを食べる時には、候補に入れてみてはどうだろうか。
【店舗データ】
店名:釜粋(かまいき)
所在地:奈良市東向南町13−2
定休日:不定休
TEL:0742-22-0051
営業時間 :11:00〜15:00 17:00〜21:30
駐車場:無し
子供連れ:OK
Webサイト:http://www.kamaiki.com/