石窯で焼き上げた本場ナポリの美味しいピザをグルテンフリーで頂けるイタリアン(ランチ営業あり)のお店が、奈良市に誕生した。
PIZZERIA ICARO(ピッツェリア イーカロ)だ。
オーナシェフの中西さんはイタリアでピッツア作りの修業を重ねた本格派。
オープン日は2017年5月10日で、たまたまグランドオープンを知ることができたので、開店当日にランチを頂きに訪問した。
場所は生駒から阪奈道路に乗り、阪奈道路の終点からすぐの場所だ。
二条大路南5丁目のファミリーマートから一つ目の細い道路を左折してすぐの場所にある。
それにしても、スマホの音声検索で「イーカロ 奈良」と話しても「いいから 奈良」や「イカロ(イカロス) 奈良」と返してくる精度の悪さはなかなかのものである。
具体的な行き方はこんな感じだ。阪奈道路をそのまま真っすぐ走り、ファミリマートを通り過ぎて、Jネットレンタカーを左折するとこんな狭い道に入るが、すぐにお店の広い駐車場になっているので特に迷うことはない。
十分な駐車スペースがあるので、満車で入れない、という心配も無さそうだ。
お店にはまだ、新装祝いのお花が所狭しと並べられている。
店内に使われている木材は、地元奈良・十津川産の無垢材。木の良い香りと優しい空気が心地よく客を出迎えてくれる。
十津川の無垢材でこれだけのお店を作るのは相当な苦労があり、費用もかかったはずだ。
お客さんを歓迎したい、オーナーのこだわりが感じられる。
客席は4人掛けテーブルが8つほどあるが、組み合わせで6人掛けなどにもアレンジしてもらえる。
個室もあり、最大で8人ほど入れそうだ。並んで食事を頂きたい2人連れのために、カウンター席も用意してある。
ピッツアを焼く石窯も本格的なもので、美味しいものを頂ける予感しかしない。
清潔に整えられたシルバーやお手拭きは一つづつ丁寧に紙袋に入れて提供される。
オーナーシェフも3人の子供を育てる育児パパということで、子供歓迎の嬉しいお店だ。
おままごとのようなナイフとフォークも出してくれるので子供が大喜びだが、テンションが上がりすぎてしまうかもしれない。
こちらのお店の最大の特徴は、グルテンフリーの食材で作られたピザやパスタ、ドルチェを頂けることだ。
小麦アレルギーの子供でも一緒のものを一緒にテーブルを囲んで頂くことができるようにと、通常メニューと、グルテンや小麦を一切使わないメニューの両方が用意されている。
もちろん、グルテンフリーの食生活を心掛けている女子友達同士での利用もアリだろう。
グルテンフリーといえば、一時期グルテンフリーダイエットが話題になった事があるが、今も欧米のセレブの間では一般的な考え方とされている。
小麦製品自体の摂取を控える食生活を意味するものだが、小麦を頂く場合でも、グルテン成分を取り除いた「浮き粉」を用いて料理をする。
和菓子ではよく用いられる食用粉だが、男子テニス世界ランキング1位のジョコビッチなど一流スポーツ選手や美容に気を使うハリウッドセレブも実践している考え方だ。
それに比べて、日本ではまだまだ普及途上にある考え方かもしれない。
この日は、グランドオープンスペシャルメニューのピッツアプランを頂いた。
グルテンフリーは余り意識したことがなかったが、ピザは通常の小麦のもので。
パスタはグルテンフリーのクリームスパゲティを注文。
こちらは前菜の季節の菜園風たっぷりサラダ。
よくサラダの基本は3つのC、すなわちCold(冷たい)、Clean(清潔)、Crisp(パリパリした食感)と言われるが、見ただけでその全てを満たしている最高のサラダであることがわかる。
聞けばこの野菜、完全有機・無農薬で野菜を育てている、我が生駒市のひらひら農園さんから仕入れているそうだ。
オーナー自ら農園に足を運び、季節で一番美味しい野菜をチョイスしているとのことだったが、この野菜の旨さは相当凄い。
「カリッ」「カリッ」と噛むたびに心地よい音がする葉物野菜など、そうそうあるものではない。
冷やしすぎて、あるいは水を吸わせてパリパリ感を無理やり出しているわけでもない、肉厚の野菜を噛む時に出る本物の心地よい歯ざわりだ。
これだけの野菜なので、細かくちぎらず、敢えて大ぶりにそのままの姿で出してくれる。
調味料も、オーナーシェフのこだわりでフランス・ゲランド産の塩とイタリアの契約農家に作ってもらっている、レモン風味のエクストラバージンオイルのみ。
しかしこのシンプルな味付けが最高に素材の持ち味を引き出していて美味い。
良い食材を選び抜き、その旨さをシンプルに引き出す、シェフの料理哲学がガツンと伝わる一皿だ。
なお後ろに写っているのは「フォカッチャ代わりにどうぞ」とサービスで頂いた、ピザ生地にたっぷりのバターを塗ったもの。
とても美味しかったが、開店サービスなので普段は頂けない。あしからず、である。
セットメニューのマリゲリータ(グルテンフリーではないもの)だ。
ピザに使われている小麦粉は、地元奈良県産の小麦「ふくはるか」とイタリア産の小麦をブレンドしたものだ。
昔から奈良では、三輪素麺作りが盛んで一面に小麦畑が広がっていたのだが、後継者不足と北海道産小麦との価格競争に破れ、近年では廃業する小麦農家が多い。
そのような地元の小麦農家のために、少しでも力になれることはないかと、地元の美味しい小麦を使いピザ生地を練っているそうだ。
野菜も小麦からも、地元を強く愛するオーナーシェフの気持ちが伝わってくる。
材料原価率も相当なものだろうが、この取り組みは地元民として心から応援したい。
シンプルに焼き上げられたピザは薄めのもちもちタイプ。
薄く焼き上げられているのでクリスピータイプかと思ったが、薄いのにもちもちしているので食感が心地よい。
分厚くもちもちのピザは時に頂いていてくたびれる事があるが、こちらは絶妙の薄さ加減だ。
酸味のあるトマトソースも生地とよく合っており、シンプルでごまかしの効かないマルゲリータを美味い一皿に仕上げている。
こちらはグルテンフリーのイタリアンハムときのこのスパゲティだ。
小麦が使われていないグルテンフリーという予備知識がなければ、何の違和感もない普通のパスタに思える。
見た目も、小麦が使われていないとはとても思えない。
なお材料は、有機とうもろこし粉をメインに、有機米粉をブレンドしたものだそうだ。
気をつければ、少し表面の舌触りが通常のパスタと違うように感じるが、クリームソースの滑らかな舌触りもあって全く違和感がない。
何よりも、パスタのクリームソースが美味い。今までに頂いたクリームソースパスタの中でもかなり上位に来る旨さだ。
グルテンフリーの制約の中で作っている一皿とはとても思えない。
食後のドルチェとアイスコーヒー。
こちらのデザートもグルテンフリーだ。
浮き粉(小麦粉からグルテンを取り除いたもの)と米粉、少量のそば粉を使いデザートを作り上げている。
こちらもやはり、何の違和感もない、美味しいデザートとして普通に頂ける。
制約があるからこそ、シェフの創造意欲が掻き立てられているであろう一皿になっている。
お店は、小麦アレルギーを持つ子供などのために、調理場スペースと食器を厳格に使い分けている。
画像のように、画面右のピッツェリアスペースと画面左のパスタスペースを物理的に隔てているだけでなく、画面奥の、扉を締め切る形でのグルテンフリールームまで設置している。
ほんの僅かでも、小麦粉製品が小麦粉を用いない製品と混在することを徹底的に防止するためだ。
またお店の外では有機無農薬の野菜を育てる農園を整備中だ。
まだ収穫はわずかだが、今後多くの野菜を育てていきたいと、オーナーシェフの中西さんは熱っぽく語ってくれた。
なおお店は、厳選された材料を丁寧に作り提供することをコンセプトにしているので、宣伝や広告は一切打っていない。
食べログなどのグルメサイトも営業に来たそうだが、ゆっくりと目立たないようにスタートアップしたいというオーナーの意向で、全てお断りしたそうだ。
そんな目立たないひっそりとしたオープン初日にたまたま訪問できたのはラッキーだったが、
「知り合いや、そのお友達ではない、初めての一般のお客様です」
とのことだった。
大変光栄だ。
なお繰り返しになるが、お店の営業方針やコンセプトは大変素敵なものだが、材料を厳選し丁寧な仕事で料理を提供されているので、早い時間で売り切れになることも予想される。
料理の提供時間もやや掛かるかもしれないが、それも含めてオーナーの経営方針に共感した上で、お店に訪問して欲しい。
とても素敵な、隠れ家的なイタリアンのお店。
近い将来、人気の有名店になることは確実だろうが、余り騒がずに見守っていきたい。
【店舗データ】
店名:PIZZERIA ICARO(イーカロ)
所在地:奈良市二条大路南5丁目2-48
定休日:第二日曜日 月曜日
TEL:0742-93-9070
営業時間 :11:30〜15:30 17:30〜22:00
駐車場:十分あり
子供連れ:OK(歓迎)
Webサイト:https://pizzeria-icaro.jp/