土用の丑の日が近づくと、奈良や生駒でもうなぎ店が活気づく。
しかしここ、うなぎ大門では1年中活きたうなぎをその場で捌いて食べさせてくれるとあって、季節を問わずに客足が途絶えない。
7台ある駐車場は平日でも満車のことがあり、名実ともに奈良を代表する活きうなぎの名店だ。
奈良中央卸売市場のすぐ目の前にあり、近隣には松下電器の工場もある幹線道路沿いのため、あるいは社用族もランチから利用している人が多いようだ。
お店は4人掛けのテーブル4つに座敷が一つと、決して広いとはいえない。
その店内には、店主と奥さんの他に、大量のうなぎがお客さんを待ち構えている。
この店の規模でこれだけの活きうなぎを常時ストックしているところに、人気店の回転の良さが窺えるが店主は決して仕事に手を抜くことはない。
注文を受けてから捌くところを「宜しければご覧ください」と声を掛けてから捌き始める。
これだけの規模だからこそ、熟練の職人が確実に対応できるのだろう。
入店待ちの列が出来ており待つことも多いが、並んででも食べる価値があるお店だ。
ひつまぶしにうな重定食、うな丼定食など定番のメニューが並ぶ。
ちなみに大門では、うな重定食とうな丼定食の違いはご飯が白ご飯かうなぎの炊き込みご飯かの違いだ。
うな丼が白ご飯というのは、大門流の区分かもしれない。
しかも単品のうな丼はタレまぶしご飯にしているので、違いがわからなければよく聞き、理解して注文するようにしよう。
それにしても、なぜラーメンがメニューにあるのかが謎である。
「自家製キムチと肉味噌たっぷり」と書いているところを見ると、うなぎは一切関係ないのであろう。
これだけ美味いうなぎの店に来てラーメン900円也を注文する人がいるのだろうか。
一度探偵ナイトスクープあたりに調べてほしいものだ。
捌きから始める鰻屋は、必然的に待ち時間が長い。
そのためか、どこもうなぎに関するノウハウや歴史といった読み物を置いているところが多い。
大門では奈良らしく、万葉の時代にうなぎが愛されていた歴史から現代に至るまでを完結に説明していた。
なおうなぎは四国産と書いてあるが、聞いてみたところ徳島産ということだった。
店主いわく、
「うなぎは産地では味は変わらない。問題は、すでに焼いて冷凍してあるものを仕入れて、温めて売る店。あれじゃあうなぎが台無し。焼肉だって、焼きたてと焼いた冷凍肉を温めたものだとその差は歴然でしょう。」
と熱っぽく語ってくれた。
他の店では温めているだけ、というセリフも飛び出したが、奈良で「他の店」といえばおおよそ絞られてくる。
そう言えば、ウナギをディスプレイしている店はあるが、捌き/焼きが見られるのは大門だけだなあ・・・まさか「あの店」も捌きからやってないのだろうか、などと思ったが、それ以上聞くのは止めておこう。
ちなみに大門では匂い消しの山椒を置いていない。
こんなところにも店主のこだわりがある。
うなぎの捌きはまさに熟練の技だ。
開き方は腹開きの関西風。しかし、あまりにも手際が良すぎて何をどう捌いたのかよくわからない。
あっという間に割かれているのに身はきれいで荒れること無く、迷いのない包丁さばきに見とれてしまう。
大門では「天火のガス」でウナギを焼き上げる。
最初に遠くからゆっくりと。次に近火でさっと焼き目をつけている。
焼いている最中、焼き具合をじっと見つめる店主の表情は真剣そのもので、これではたくさんのお客さんを捌けるはずもなく、人気店なのに長年この規模から大きくしない理由も頷ける。
今以上の規模にしたらこんな仕事はできないだろう。
上火で焼く理由は、ガスの火を下にしてうなぎを焼くと余分な水分が抜けないからであろう。
関西風のウナギはパリッとした皮目ととろっとした身の旨さが特徴だ。
これをガスでやろうと思えば、必然的に天火ということになる。
うな重定食竹2200円に、ひつまぶし2700円だ。
うな重の竹はうなぎが半身、ひつまぶしは贅沢に1匹分使われている。
なお大門のひつまぶしはだし汁で頂かずに生卵で卵かけご飯にして頂くスタイルだ。
かなり変わったひつまぶしだが、だし汁で頂くより濃厚に鰻の味を楽しむことができるのが嬉しい。
肝心の鰻だが、かなり美味い。
「うなぎの川はら」は炭火焼きが売りだが、炭火で焼いた食材は確かに旨いものの、淡水魚を炭火で焼くのは相当難しい。焼き加減を見定めないと表面がすぐにカラッカラに乾き、関西風のようにパリッと焼いたつもりでも、水分が抜けすぎることがあるからだ。
そして川はらでは、焼く職人によってややその傾向が見られる日がある(ちなみに川はらでは、その日の焼き職人の名前を店頭掲示しているので確認したらその傾向がわかるかもしれない)。
一方で大門は、あくまでも関西風のパリッとした皮目のパリパリ感を感じられるものの、身のしっとりさと脂の残し加減が絶妙だ。
何よりも驚くのが、尻尾の先の部分まで身の柔らかさを感じられることだろう。
川はらに比べ、パリパリ感を表面だけに抑えて、身のふわふわ感を引き立たせている。
これはどちらが好きかという好みの問題なので、どちらが美味い、という話ではないが、関西風をより強く感じられる鰻を頂きたい場合は川はら、関西風だが身のふわふわ感も重視したい人は大門に行けば、よりうなぎの味を楽しめるのではないだろうか。
お腹にもガッツリ溜まって大満足のうなぎ料理。
大和郡山に出掛けることがあれば、ぜひ一度は寄ってほしい鰻の名店だ。
【店舗データ】
店名:うなぎの大門
所在地:大和郡山市筒井町934-1
定休日:不定休
TEL:0743-57-7234
営業時間 :11:30~22:00
駐車場:店横7台
子供連れ:OK(歓迎)
Webサイト:ー