「三人寄れば文殊の知恵」の語源であり由来となった文殊菩薩。
その文殊菩薩を本尊とし、日本三文殊の寺院として知られる桜井市の安倍文殊院で、春の寺宝展が開催されている。
他に京都の切戸文殊、山形の亀岡文殊が知られているが、知恵の神様の信仰を集め、呆け封じのご利益がある霊場としても名高い。
「三人寄れば文殊の知恵」は、凡人でも3人集まって知恵を出し合えば、知恵の神様である文殊菩薩様のような集合知を出すことができるという諺だが、インターネットの時代でこそ集合知という考え方は広く効果的であると知られているものの、古来より同じ考え方があったというのは興味深い。
安倍文殊院は大和の国の寺院らしく、極めて由緒ある伝統と歴史を持ち、創建は大化の改新の時代まで遡ると言われている。
孝徳天皇の治世、初代左大臣に任命された安倍倉梯麻呂(あべのくらはしまろ)の氏寺として建立されたと伝えられているが、代々安倍家と縁が深く、寺宝には安倍晴明像、安倍仲麻呂像も伝わる。
晴明は平安時代の陰陽師として名を馳せ、仲麻呂は百人一首にも編纂されている、
天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも
(大空を見上げて見える月、私の生まれ故郷の春日・三笠山にも同じ月が昇っているであろう)
の和歌で有名な歌人なので、知っている人も多いだろう。
留学先の中国・唐の都で月を見上げ、自分の生まれ故郷からも今、同じ月が見えているのであろうか、という歌を詠んだ気持ちは、現代人の故郷に感じる郷愁と何ら変わらない。
阿倍仲麻呂は結局、72歳で唐で客死をしていることと併せて考えると、歌の意味もまたひとしおだ。
1000年以上の時を経ても、和歌には日本人の心を揺さぶる文化がある。
さて、そんな安倍文殊院だが、春の寺宝展では、その安倍仲麻呂公像と安倍晴明公像が祀られている金閣浮御堂まで立ち入って拝観することができる。
拝観を終えればお守りも頂けるが、別の拝観ルートである本堂の国宝文殊菩薩ルートでお参りすると、お抹茶とお菓子を頂くことができるので、どちらも魅力的だ。
時間が許せば、どちらの拝観ルートも楽しんでみてはどうだろうか。
それぞれのコースを参拝することを予め決めておけば、割引参拝券が購入できてお得になるので、ぜひ検討して欲しい。
なお安倍文殊院はお寺としては珍しく、各種電子マネーで拝観料を納めることが可能だ。
2017年5月現在、icoca、ID、PiTaPa、QUICPay、Edyを使うことができる。
また駐車場から境内までバリアフリーになっているので車椅子での参拝もできるので、お年寄りや体の不自由な人にも優しい作りになっている。
寺宝展は5月31日までとなっているので、興味があれば早めに出かけたほうが良いだろう。
【イベントデータ】
名称:春の特別拝観(寺宝展)
開催場所:安倍文殊院
所在地:桜井市安倍山
日時:2017年3月1日(水)~5月31日(水)
開催時間:9:00~17:00
問合せ先:0744-43-0002(安倍文殊院)
料金:大人700円 子供500円
駐車場:有り(普通車500円)
目安所要時間:60分
Web:安倍文殊院公式Webサイト
※所要時間の目安は生駒駅から普通乗用車を使った際の最短時間
※写真は全てイメージ